数ある航空トラブルで一番大変だったのが、エジプト航空チャーターの8日間ツアーだった。真夏の暑さで滞在中も病人のお世話に追われ、更に帰途ルクソール空港で付添を含めて2名が残ることとなり手続き等で疲労困憊のまま搭乗した。エジプトから経由地バンコック迄9時間のフライトは寝っぱなし。
バンコック着後トランジットルームで出発時間になっても誘導アナウンスが無い。1時間、2時間、時間が過ぎるばかりで、機内食積み替えに時間が掛かるとの案内のみ。しかし窓外の搭乗機前輪の周りには多数の人だかり、様子がおかしい。お客様もイライラして騒ぎ出す。結局6時間後、前輪車軸のひびが原因で更に半日遅れるとの説明があった。上陸禁止扱いで空港近くのホテルに200名が分宿となったが、PPや荷物は空港預かりで着の身着のままの状況に置かれる始末。
ホテル到着して部屋割り後宴会場で事情説明、最初は興奮し怒声をあげていたお客様も添乗員が手分けしてご案内をし、食事をとっている間にやっと大人しく話を聞いていただけるようになった。
荷物も無く着替えも出来ない状況での丸二日間の軟禁状態は想像以上の修羅場であったが、大きなクレームも無く、病人発生も無かったことは、今から思うと定期的な状況説明会、当座の下着の購入、家族への連絡用ホットラインの開設、いつでも食事できる会場の設営など、添乗員一同が誠心誠意お客様に対応したことだと思われる。中でも非常時に最も大切なことは、正確な情報をお客様に伝えることであった。
添乗をしていると本音が出せない部分が多々あるが、特にトラブルの場合にはその場逃れの体裁をつくろったり、嘘や隠し事をしないことが大変重要と思われる。
当り前のことであるが、お客様へは常に誠心誠意で接することが現在も一番心がけている自訓である。
大きなトラブルも誠心誠意対処すれば、お客様も最後は理解してくれると信じている。